教授あいさつ
現在の麻酔はデバイス、薬剤の進歩により安全性が向上し、標準化されてきました。誤解を恐れず言えば“容易になった”とも言えるでしょう。車の運転のようにきちんとルールを守って運転すれば、 比較的安全に行うことができると思います。このような時代背景で、これからの麻酔科医に求められるものは何でしょうか。
私は“安全で確実な手技”、“サブスペシャリティの取得”、“トラブル対応”ではないかと私は考えています。重要なのはこれらを”具体的に”体得していくことです。
愛知医科大学麻酔科では「形に残る教育」をスローガンに具体的な教育を展開しています。学び始めた若い先生方が数年後に “ただ頑張った”だけではなく、例えばエコーを用いて確実に手技を一人で完遂できることや、頑張って勉強して取得した資格という“目にみえる形”にすることで自信を持って臨床経験を積んでいただくことを目指しています。
(具体的内容はホームページをご覧ください。)
さて「専門医」とは何でしょうか。私は”チームの重要な行動判断に関われる医師”であると考えています。そのためには他の診療科の先生方に対してリスペクトを持って、論理的で建設的な”提案ができる”必要があります。例えば出血などのトラブルが生じた時にこそ頼りになり、行動判断ができる医師が「専門医」だと思います。これにはやはり経験が必要です。このように考えると専門医資格や各種資格を取得すること自体はゴールではなく、スタートラインであると言えます。若い先生方が資格を取得し、経験を積んで最終的に「専門医」になっていただけることを目標に指導にあたっています。
具体的な教育がある点は愛知医大麻酔科の良いところだと考えています。しかしながら、麻酔科学の全ての分野を深く学び、経験することはできません。当院では行なっていない麻酔法や経験することができない症例があります。そのため若手の先生方が麻酔科専門医を取得したのちに、新たな経験を求めてここを旅立つ時が必ず来ます。私としてもそれを推奨しています。その時に、どの施設でも受け入れていただけるスキルと知識を持ち、幅広い選択肢の中から将来を選択できるように育成するのが私の責任だと思っています。
まずは麻酔科専門医を取得するまでの大切な3年間、これからの基礎を築くために私たちと一緒に頑張ってみませんか。
病院見学をお待ちしております。
医局長より一言
麻酔科医に求められる資質で、私が考える大事な部分の1つは「おもてなしの心」だと考えています。麻酔科医は、患者様・外科医, 看護師, 臨床工学士などのスタッフの方々が何を求めているのかをくみ取り、円滑に医療を提供できるようにすることが肝要です。また何かあったときの「最後の砦」であるということも大事な部分だと思います。何か緊急事態が起きたときに、冷静沈着に対応できる臨床能力・精神力も大事だと考えています。その為には、麻酔科がカバーしている領域における知識・技術の経験を積む必要があります。
麻酔科と一言で言っても、そのカバーする領域は多岐にわたります。麻酔管理と言われる中には、一般外科を始めとして、小児麻酔・産科麻酔・心臓麻酔・区域麻酔と特殊な麻酔もあります。また集中治療管理やペインクリニックも麻酔科医が関わります。
さて当院麻酔科は2023年新教授・野手英明先生をお迎えし、新しいメンバーと共に大きく生まれ変わろうとしております。安全で安定した麻酔能力や手技の習得を目指すことをまず大事にします。基礎が固まらなければ、柱は立ちません。また先程紹介したそれぞれの分野において、研修できるような指導体制を確立すると共に、専門医・資格取得に向けた教育を行えるようになっております。幅広い分野で研鑽できる環境を提供できることは、愛知医科大学麻酔科の強いメリットだと考えております。麻酔科専門医取得を目指すと共に、サブスペシャリティ取得に向けてサポートさせて頂きます。
専門医取得までの大事な3年間を、新しい風が吹くこの愛知医科大学麻酔科で一緒に研修し、一人でも多くの患者様を笑顔にしませんか?興味のある先生方は、是非ご連絡下さい。
愛知医科大学麻酔科 医局長 梶浦 貴裕
女性医師の立場から
私は麻酔、集中治療を学ぶ中で医師5年目、8年目に出産を経験しました。出産後、時短勤務を経て復帰し、麻酔科専門医や集中治療専門医を取得しました。その後、サブスペシャリティーとして産科麻酔の勉強をすべく、大阪大学病院のご縁で大阪府の千船病院にて無痛分娩や周産期麻酔を学んで参りました。2023年4月から愛知医科大学病院で常勤として手術麻酔、集中治療に携わり、産科麻酔の経験を活かせる形で働かせて頂いています。
私のキャリアを文面にすると一見、順調に見えるかもしれませんが、決してそのようなことはなく、何度も麻酔科医としての医師人生を諦めようと思いました。「キャリアか育児か」が二者択一に思えた時期がありました。だからこそ、私は「出産・育児でキャリアが積めない時代は終わらせたい」と考えています。キャリアの維持・取得にフルタイム労働や当直は必須か?答えはNoだと考えています。少なくとも愛知医科大学病院麻酔科ではNoです。
育児をしながら、無理なく可能な範囲で働きかつ学ぶ。これを持続可能な形で実現したいと思っています。フルタイム労働で当直をされる先生方より経験する時間は少ないかもしれませんが、限られた時間の中で質を向上し、手応えのある経験を積んでいただきたいと考えています。長期的視点に立った時、これが重要なキャリアとなると思います。その結果、将来的に私生活と照らし合わせて働き方を考えた時に、選択肢が増え医師としての自信にも繋がります。これは野手教授が常々医局員に伝えていることでもあります。
しかし、ライフスタイルが変化した時、当事者であるご本人が冷静に長期的視点に立つのは難しいこともあると思います。ライフイベントに伴うホルモンバランスの乱れがそれを助長することもあるでしょう。そのような場合、遠慮することは全くありません。ぜひ相談してください。その時にキャリアを諦めるのではなく、それぞれの先生の現状にあったベストな提案ができる組織でありたいと考えています。
このような考えにご賛同頂ける方々と働ける事を楽しみにしています。