愛知医科大学病院麻酔科では年間6,500件以上の麻酔管理を行っています。手術室と同じフロアにある周術期集中治療室(GICU)では、麻酔科管理で術後患者や院内重症患者の全身管理を行っています。ハイリスク患者に対し、術後管理をイメージした麻酔計画をたて、術中麻酔管理を行い、術後GICUで全身管理を行うというシームレスな管理の経験は教育効果が高いと考えています。このような環境で若いうちから臨床経験を積むことは全身管理の基本やセンスを身につける上で非常に重要です。また心臓麻酔やペインクリニックなどのより専門的な分野に触れることで多様な体験をすることができます。
手術麻酔
当院は新生児から100歳を超える超高齢の心臓弁膜症手術など大学病院ならではの幅広い症例を経験できる施設です。心臓血管外科、脳神経外科、呼吸器外科や6ヶ月未満の小児など専門医、認定医取得に必要な症例の経験ができます。またTAVIやMitraClipなどの麻酔管理を行っています。各種麻酔では例えば経食道心エコーや片(分離)肺換気などについて基本的なことを確実に教えます。また他院では全身麻酔が困難という理由で手術ができなかった患者様も末梢神経ブロックと鎮静薬を使用して全身麻酔を回避して手術を行うなど、様々な方法で麻酔に取り組んでいます。
各手術の術後管理では心臓血管外科術後や重症併存症を持つ術患者などは麻酔科がGICUで術後管理を担当しています。これは麻酔管理、具体的にはボリューム管理や疼痛管理が適切であったかどうかも含めてGICUで“答え合わせ”できるというイメージですね。
麻酔科管理の手術件数は増加傾向で、2023年は約7,000症例が麻酔科管理でありここ10年で最も多い件数となりました。
術後の良好な疼痛コントロールは麻酔科の責務と考えており、硬膜外麻酔や(持続)末梢神経ブロックを積極的に行っています。外来でも硬膜外麻酔のカテーテル挿入を行うことがあり、上級医から丁寧に指導を受けることが可能です。Acute Pain Service(APS)も始動しており、術中麻酔管理からシームレスに疼痛管理について学ぶことができます。
常に「本当に自分が行なった術中の麻酔管理は適切だったのか?」と自問自答しながら日々麻酔を行なっています。当院は若手医師の教育に特に力を注いでいます。ぜひ一度見学に来てみてください。
- 麻酔科管理の手術件数
横にスクロールしてご覧ください→
麻酔法分類 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 (12月まで) |
---|---|---|---|---|---|---|
全身麻酔(吸入) | 3,469 | 3,681 | 3,300 | 3,635 | 3,527 | 2,778 |
全身麻酔(TIVA) | 532 | 440 | 543 | 419 | 558 | 577 |
全身麻酔(吸入)+硬・脊、伝麻 | 2,155 | 2,382 | 2,123 | 2,203 | 2,064 | 1,574 |
全身麻酔(TIVA)+硬・脊、伝麻 | 125 | 82 | 311 | 182 | 184 | 262 |
脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA) | 193 | 193 | 182 | 200 | 190 | 20 |
硬膜外麻酔 | 4 | 2 | 2 | 0 | 1 | 5 |
脊髄くも膜下麻酔 | 74 | 94 | 93 | 101 | 68 | 189 |
伝達麻酔 | 7 | 24 | 8 | 10 | 10 | 16 |
その他 | 15 | 50 | 44 | 82 | 94 | 133 |
合計 | 6,574 | 6,948 | 6,606 | 6,832 | 6,696 | 5,554 |
横にスクロールしてご覧ください→
手術部位分類 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 (12月まで) |
---|---|---|---|---|---|---|
開頭 | 290 | 326 | 351 | 356 | 360 | 299 |
開胸 | 241 | 243 | 284 | 240 | 248 | 214 |
心臓・大血管 | 359 | 349 | 293 | 339 | 362 | 294 |
開胸+開腹 | 36 | 13 | 16 | 26 | 33 | 23 |
開腹(除:帝王切開) | 2,101 | 2,080 | 2,113 | 2,201 | 2,160 | 1,678 |
帝王切開 | 217 | 225 | 220 | 229 | 206 | 174 |
頭頚部・咽喉頭 | 1,161 | 1,268 | 1,103 | 1,261 | 1,256 | 1,038 |
胸壁・腹壁・会陰 | 610 | 687 | 604 | 607 | 681 | 577 |
脊椎 | 221 | 316 | 295 | 260 | 265 | 240 |
四肢(含:末梢血管) | 789 | 858 | 767 | 763 | 620 | 591 |
その他 | 550 | 583 | 560 | 550 | 505 | 426 |
集中治療
中央手術部に隣接して周術期集中治療室(GICU)があり、術後患者、院内重症患者の管理を行っています。(院外からの重症患者はEICUに収容されます。)
術後より安全にモニタリングを行うことができ、また患者さんの鎮痛効果や吐き気などの症状、活動度などを見ることで、それを麻酔管理に生かすこともできます。
当院のGICUでは小児から高齢者まで一般的な集中治療管理を学ぶことができます。具体的には人工呼吸管理(腹臥位療法など)やNPPV、HHFC、CHDF、IABP、VA-EAMOなどのデバイスについて基本を丁寧に教えます。まずは基本的なことから集中治療管理を学びたい先生方をお待ちしております。
ペインクリニック
日本人の80%が何かしらの痛みを抱えていると言われています。その中には痛みのため通常の生活ができない人が一定数おり、これらの人々の症状を改善し、ADLを保つことがペインクリニックの役割です。現在様々な方法で疼痛治療が行われていますが、疼痛治療における麻酔科としての強みは何でしょうか。私は神経ブロックであると考えています。近年周術期での神経ブロックが普及しており、身近なものになっています。これらの技術を応用することによりペインクリニックの現場でより質の高い疼痛治療が実現できます。
私は今までがん疼痛治療に対する神経ブロックを主に行っており、愛知医科大学麻酔科ではエコーガイド下や透視下での神経ブロックや脊髄鎮痛法を用いて疼痛治療を行います。痛みが良くなった時に患者さんからいただける感謝の言葉は至上の喜びです。私たちと一緒に疼痛治療を行ってみませんか。